めくる

きょしょくと かしょくの はざま

食べるということ

過食が常になってきた頃

このままじゃ際限無く太る

元に戻れなくなる

食事に甘えてばかりの自分は許せない

許せない

許せない

頭がぐるぐる

仕事をしていても食べ物のことばかり考えていた

過食したい

食べたくない

食べたくない

食べなければいい

食べたくないから、食べなければいい

思考回路のスイッチが初めて入れ替わった

食べたくない、太りたくないなら食べなければいい

吐きたくないし、下剤を乱用したくないから、食べなければいい

食べなければこんなに悩まなくていいんだってことに気づいてしまった

食べて甘えている自分を、少しは許せるようになるかもしれない

甘えなくてすめば疑心暗鬼も消え去るかもしれない

食べるという甘えを、辞められるかもしれない

この思いが一番強かったな

甘えている自分を許せなかった

泣きながら食べて一時の快感を得ようとする自分が嫌だった

いつしか生きるための行動である「食べる」ということが、どうしようも無く許せなくて嫌いなことになっていった

この頃から、飢餓に近い食欲がぱたっと無くなった

1日1食、500キロカロリーにも満たない食事だけで大丈夫になっていった

500キロカロリーも取りたくはなかったけど、仕事をしているので取らざるをえなかった

食べるということは甘え

これは今でも自分の中の揺るがない事実になっている

甘えている自分を許せない

きっかけ

いつから摂食障害になったんだろう、と記憶を辿ってみると、きっかけは仕事だといつも思う

仕事は楽しかったけど、私の上に立つ人間とうまくいかなくて、常にイライラむしゃくしゃしてた

今は転職して違う現場にいるけど、今でもフラッシュバックするし思い出すと吐き気がする

多分、悪い人じゃないんだろう、人望もあったと思う

でも絶望的に相性が悪かったんだと思う

相手の一挙一動、言葉の端々にカチンときて平常心じゃいられなかった

食事が乱れたのもその頃

朝は食べず、昼は弁当持参、夜は自炊

就職したてはこんな食生活だった

でも、だんだん食べる量は増えていったんだよね

朝からドカ食い、昼は人目につくから抜き、夜もドカ食い

人目を避けるところとか、典型的だよな

今考えると引くほど食べてたけど、過食だって自覚はなかったんだよね

いつの日か、服が心なしかきつくなってきて、焦って体重計を買って、初めて自覚した、非嘔吐過食だって

自覚してからは、食事が精神的にキツくて仕方なかったな

でも食欲はコントロールできないし、泣きながら食事してたな

食べ続けても上げ止まりというものがあって、70キロまで増えて横ばいになった

一番痩せていた学生時代より、20キロ近く増えてしまった

学生時代から付き合っていた彼氏に打ち明けるも、甘えと言われて酷く傷ついた

知識が無くただの食べ過ぎ、意志が弱すぎと思ってたみたいで、謝罪はされたけどもうずっと疑心暗鬼

いくら謝ったところでその口から吐いた言葉は消えない

食べることは甘えなんだね、そうだね、私が悪いんだね

親とはずっと折り合いが悪くて、頼りたくなかった

ずっと心の支えだった人に辛辣な言葉を吐かれたとき、本当に辛かった

痩せたい、元に戻りたいと思えば思うほど比例して物を食べる毎日

リデ.ュー.スにも甲状腺ホルモンにも、一通り手を出した

でも痩せない

気が狂いそうだった、いや、狂ってたのかもしれない

このころは下剤の乱用も吐き方も覚えた

喉の粘膜を切りながら吐いて、吐けなくて泣いて、泣きながら食べて、また吐いて

「食べること・食欲がコントロールできないのは甘え」

この言葉、ずっと口に出して反芻してた

今もしてる